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【特別アピール】
フクシマを忘れない、繰り返させない特別アピール
世界中に大きな衝撃を与えた3・11福島原発事故から、4年8カ月が経過した。今なお事故は収束せず、「汚染水」はコントロールされることなくたれ流され続けている。何十年、何百年も続く環境の放射能汚染によって、家族は引き離され、被災地の生活と産業、地域の文化は奪い去られている。放射線被曝による健康被害、世代を超えた健康影響ははかりしれないものがある。
毎日多くの労働者たちが、放射線にさらされながら過酷な労働条件の中で原発や環境汚染と対峙し、事故の収束・廃炉や除染作業に奮闘している。以前の暮らしを取り戻すには何年、何十年、否、何百年かかるだろうか。どれだけの資金を必要とするだろうか。何人の犠牲者が生まれるだろうか。気が遠くなってしまう。
私たちはフクシマを忘れない、忘れてはならない。それは被害者の「命」と「生活」に寄り添うこと、被害者への補償はいうまでもなく、「事故を繰り返してはならない」とのフクシマの「思い」に真摯に向き合うことである。
今年のノーベル文学賞には、ベラルーシの作家、スベトラーナ・アレクシエービッチさんが選出された。彼女の書いた「チェルノブイリの祈り」が評価されたからである。この著書に記されているチェルノブイリ被害者の証言は、チェルノブイリ原発事故から25年後に起こってしまったフクシマ事故の被害者の姿に重なる。
ヒロシマもナガサキも、ベラルーシの作家が語るチェルノブイリも、さらにフクシマも、歴史的「大惨事」として、時代の転換を画すものである。
これだけの惨事を起こしたにもかかわらず、その元凶である東京電力も、また「国策」として原子力発電を推し進めてきた政府も、誰ひとりとして責任をとろとしていない。それどころか、国民の大多数が原発推進に反対しているにもかかわらず、政府や電力会社は、原発重大事故が起こりうることを前提に「再稼働」を強引に進め、また原発労働者に高線量被曝を強いる「緊急時被曝限度」の引き上げをしようとしている。福島原発事故の原因の十分な解明も、事故の収束も、事故対策も進まず、何よりも被害者に対する救済が切り捨てられる中での凶行である。
このような状況の中で、政府は世界各地に原発輸出を成長戦略の目玉として推進している。これに対しては、日本国内はもとより世界中の市民から「福島原発事故の反省もなく、原子爆弾の被爆国が…」という強い怒りと抗議の声が大きくあがっている。
来年はチェルノブイリ原発事故から30年、フクシマから5年という節目の年を迎える。
私たちは「核と人類は共存できない」という原点に立ち、世界中が原発に頼らない再生可能なエネルギー政策への転換を図るとともに、核兵器の廃絶をめざし、人類の生存とこの地球を守るために、繋がりあい連帯しながら行動する。このことを特別アピールとして決議し、チェルノブイリ、フクシマの思いと痛みを自らの問題として受けとめ、みんなの行動で核のない未来の実現を目指していこう。
2015年11月23日
広島・長崎被爆70周年
核のない未来を! フクシマを核時代の終わりの始まりに!
世界核被害者フォーラム参加者一同
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(2015/11/26 update)